杏ちゃん

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 新入社員の三木さんを盛田さんと一緒に社食に案内した。 今週から研修を終えて、配置された三木さんは、22歳で、元気でハキハキ物を言う子のようだ。メイクもしっかり、きれいに髪を巻いている。 「既婚は恋愛ゴシップに飢えているんだから」 盛田さんは新人研修を終えたばかりの新入社員の恋愛事情を聞き出そうとしている。 「ええーと。そうですねぇ。新人社員で一番のイケメンは青木君ですかね」 「ああ、青木君、総務に行った子? 確かに可愛いわ」 そう言って、盛田さんがうなずく。 私はどの子なのかさっぱり分からない。 「大学時代からの彼女、いるらしいですけど」 三木さんが付け足す。 「三木ちゃんはどういうのがタイプ?」 そう聞かれて、三木さんが社員食堂を見渡す。 「私が素敵だと思うのは、うーん?」 ちょうど人事の上原さんと新入社員の子が社食に入ってくる。 軽く頭を下げた。 「あ、上原さんと佐藤さんは素敵ですね」 どきりとした。 「え、あの二人、結構、上だよ。佐藤って、サトダでしょ。サトケン?」 盛田さんが色めき立って、聞く。 サトケンさんはもうちょっと若いけど、ぽっちゃり、ふんわり男子だから、サトダさんだろう。 「はい、チーフです。佐藤チーフ」 去年まで、まだサトダさんは部下にもサトダさんで通っていたけれど、今季の新入社員は研修からずっとチーフ呼びになっている。 こないだも、新入社員の男の子が大きな声で「チーフ、おはようございます!」 と言ったので、サトダさんが、 「なんで、部長、課長はそのままで、急に部下だけ英語にしたかね? なんかハズいだろ」 とぼやいていた。 確かに、チーフ以下、チームリーダーとか、おかしな名前になっている。部長とかも徐々にマネージャーとかに呼び名が変わるのだろうか。 「あと、吉田さんも、まぁまぁ。あー、総務の、えっと杉浦さんでしたっけ? あの方もいい感じ」 三木さんは華やかだ。こういう人は恋も愉しそうだな、と思う。 「上原君とサトダは拗らせてるからね。やめとき。杉浦君は、今、多分彼女いないよ」 社内事情に詳しい盛田さんが三木さんに色々、アドバイスしている。
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