杏ちゃん

10/29
前へ
/208ページ
次へ
社食を出たら、丁度、上原さんに呼び止めたれた。 「二ノ宮さん、ちょっといいですか?」 「はい」 足を止めると、上原さんはいつもの様に 「最近、どうですか?」 と聞いてきた。 全社員にこうやって、少しずつ声をかけているんだったら、本当に凄い人事だ。 「お陰様で、順調です」 軽く頭を下げた。 「もう一年位、サトダのサポートしてもらってますけど、どうですか? あいつ、大人しくしてます?」 上原さんとサトダさんは同期だ。 心安いんだと思う。 「サトダさんは、ちゃんとお仕事されてますよ。いつも忙しそうです。身体を壊しそうで心配ですけど」 そう言ったら、上原さんがふっと笑った。 「二ノ宮さんに、心配してもらえるんなら、死んでも頑張るんじゃないですか」 「私が心配してもしなくても、サトダさんは頑張っていますよ」 上原さんは、それなら良かった、と言って微笑んだ。 「ちょっとまた、お話する事があるかもですけど、その時はメールします」 それだけ言うと、帰って言った。 正式なお話なら、年度末の面談でもあるのだろうか、と思う。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1753人が本棚に入れています
本棚に追加