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「お、あぶねぇ」
見上げたら、サトダさんが携帯片手に立っていた。
「大丈夫?」
「はい。すみません。考えごとしてました」
もらった書類を隠すように抱きしめた。
隠したって、この人は異動の話を聞いている。
「何?……あぁ、あとで聞く。定時で行ける?」
「はい。大丈夫です」
そう答えると、サトダさんが笑った。
「じゃ、俺、張り切って終わらせるわ」
定時まであと三十分。まだまだ仕事があるらしい。
階段を下がって行ってしまった。
はっと気がつけば、今、会社ですこし砕けた話し方をしてくれた。
今日は個人的な話をするので、良いのだろうか。
あの人は、私の異動はどう思っているのだろう。
ぜんぜん読めない。
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