杏ちゃん

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会社をでて、ちょっとだけしたら、こっちを振り返った。 「悪いな。社内で女の子誘うの、気まずい」 「いえ、大丈夫です」 サトダさんは社内の女の子とはあまり飲みにいかないと知られてるから、同僚とはいえ、私と一対一で飲みに行くといえば、詮索される。 「ちょっと離れるけどいい?」 私が頷くと、通りを三つほど離れた半個室の創作居酒屋へつれて行ってくれた。 落ち着いた照明の素敵なお店だった。 席に着くと、ネクタイを少し緩めた。 その仕草をじっと見てしまっている自分に気がついて、視線をそらした。 熱を常にまとっている人だと思う。 「何飲む?」 あんまり強くないので、普段、会社の飲み会以外ではビールを飲まない。 二十歳の女子大生でもあるまいしと思うのだけど、結局メニューを見て、フルーツ系のサワーが飲みやすい。 「グレープフルーツサワー、お願いします」 「ん」 店員さんに自分の生ビールと私の飲み物を頼んでくれた。 会社の飲み会で同席したときにも思ったけど、サトダさんみたいに三十代半ばで仕事ができる人は、こういう場でもスマートなんだと思う。 メニューから頼んでくれる時も、私にリクエストを聞いてから、適当におすすめを頼んでくれた。手際がいい。
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