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「あれ。美和は、幼馴染で、最初の彼女」
ハイボールを片手に、少し照れたように笑った。
身の上話をするのは、誰だって照れる。照れた様子が少しかわいいと思うのは、失礼だろうか。
「くだらないことで、別れて、また付き合って。俺、いい加減なことしてたから」
少し困ったように笑った。
私にちゃんと話してくれるつもりなのか。
「社会人になってしばらくしてからもまた付き合って。三度目くらい。で、急にインドネシアに駐在の話がきて、遠距離する気もなくて、また別れた」
これが前に盛田さんから聞いた話なんだと思う。
やはり美和さんの事だった。
頷くように、軽く相槌を打った。
「二年だけ行って帰ってきたら、あいつ、結婚してんの。俺とは長い間、付き合ったり、別れたり、うだうだしてたけど、結構あっさり」
美和さん、やっぱり指輪をしていたんだ。
それでまだ忘れらずにいたんだろうか。
サトダさんがおかわりのハイボールを頼む。
私のグラスは半分のこって、ゆっくり汗をかいている。
「それで、忘れられないんですか?」
忘れられないと言われたら、私はどうするのか。
考えもしないまま聞いていた。
「んー、どうかな。その時は、自分が連れて行かなかったくせに、あいつが他のやつを選んでたのが、かなりムカついてたな」
グラスを手に悲しそうに笑った。
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