杏ちゃん

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「一度さ、地元で会って。まぁ、実家が近いから、たまに今でも偶然会ったするんだけど。なんでいきなり結婚したんだって聞いたわけ」 かなり強引な質問だと思うけど、サトダさんなら言いそうだ。 「バカみたいだけど、それまで、どこかで俺は別れても、結局、美和とまた付き合って、いつか結婚するんだろうって思ってたから」 本当にこの話をしていいのか、確かめるように、視線を上げて、私を少しだけ見つめた。 私は聞きたいと思っている。 そして、美和さんのことを他人に言うつもりもない。 無言で見つめ返したら、サトダさんは口元だけ微笑んで、話を続けた。 「美和、あきれたんだろうな。それまで言わなかったけど、俺がインドネシア行った時、妊娠してたんだ、って言ってさ。俺が引っ越した後で分かったらしいけど」 あ。 あぁ。 サトダさんの心の痛いところだろう。 聞いている私の心も悲鳴を上げる。 「海外赴任、単身で言われていたし、若かったから。連れて行くなんて、考えてもみなかったけど、美和はその時、それを望んでたのかもしれない。でも、結局おれは美和をつれて行かなかった。……で、その後にあったのが、今の旦那だって」 何も言えずに、ただ聞いていると、サトダさんはゆっくり話を続けた。
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