三木さん

5/15

1752人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
 普段の業務内容を説明して、少しずつ彼女に任せて行く。 時に楽しそうにサトダさんに話しかける彼女が少しうらやましい。 一回りも歳が違うから、憧れという風なのかもしれないし、案外本気なのかもしれないけれど、 「チーフ、これはどうします?」 と、かわいらしく首をかしげてお話している様子など、好意がうかがえる程度には楽しそうに話している。 サトダさんは丁寧に対応しているし、私も始めたばかりの時は、本当に助けていただいたから、後輩の面倒見がいい人なんだと思う。 男性社員には結構きつく言うけれど、それも愛にあふれている。吉田さんも「サトダさん」っていつも周りにいるし、新入社員の梶くんも「チーフ、チーフ」と懐いている。 必要だと言われた資料を探して、まとめたものが必要なら作成して、山ほど持ってくる領収書の仕分け、経費の会計などの雑務をこなす。出張の予約や、電話の取次ぎなどが私のサトダさんへのサポートだった。スケジュールもある程度管理している。 それらの仕事を三木さんに徐々に引き継いで、二週間で完全に渡してしまうことになっている。 すこし寂しい。 サトダさんは寂しくないのか。 毎日そんなことばかり考えている。 そして、しくじった。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1752人が本棚に入れています
本棚に追加