三木さん

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サトダさんは、電話を切ると、立ち上がった。 「俺、ちょっと出ます」 電話の内容からして、先方に会議をすっ飛ばしたことを謝りに行くのだろう。 「サトダさん、私も行きます。私のミスですから」 「いいよ。別に。あっちもどうせ確認してないんだろ?」 「私が引継ぎミスしました。すみません。私も同行して、謝ります」 サトダさんに頭を下げた。そこだけでも責任を取らしてほしかった。なんにもできない部下のまま、他部署へ行かされるのは嫌だ。 「じゃ、二ノ宮さんも行こうか。挨拶だけのつもりだし。もし今日の会議の内容の話が始まりそうだったら、先に帰ってもらうことになるけどいいですか?」 「はい、大丈夫です」 「ん。あ、三木さんも行きますか。引継ぎ中のミスだって言うんだったら、二人で行って、三木さんも挨拶したらいいんじゃない?今後も付き合いがあるとこだし、三木さんの顔、覚えてもらえるし、ね」 そう機転を利かせて、三木さんに打診する。 「あ、はい。そうします。すみませんでした」 三木さんも頭を下げた。 「三木さん、直帰でいいから、鞄もっていってください。下でタクシー捕まえるし、5分後で」 就業時間まであと少しだ。 「すみません。10分後でお願いします」 私が10分待ってもらえるようにお願いして、財布と携帯だけつかんだのをちらっと見ると、 「はい。じゃ、10ね。二ノ宮さん、領収書、もらっといでよ。」 と言ってくれた。 ダッシュで斜め向かいの和菓子屋へ駆け込む。 うちの会社が手土産を持っていくとなるとココだ。 丁度よさそうな菓子折りを買って、トイレで髪とメイクを二分で直して、引っ掛けていたカーディガンを滅多に着ないロッカーに置きっぱなしのジャケットに替えた。
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