宵のエルマー

三木さん

取引先での謝罪はすんなり受け入れられた。

いつもメールや電話でやり取りしている方が、
「二ノ宮さん、珍しいミスですね。初めてじゃないですか？」
と言ってくれて、あまり課としての信用を失わずに済んだ。

菓子折りを渡して、丁寧に謝った。
正直にミスが引継ぎで起きたと話して、三木さんを紹介した。

三木さんが元気よく、挨拶している。

ほっとした。

サトダさんも、そのまま今回参加しなかった会議の内容を話すようなら、三木さんを連れて失礼するつもりだったが、サトダさんも軽く話を切り上げたので、三人で取引先を出た。

最寄り駅で、三木さんを下す。
「本当に、すみませんでした。勉強になりました。お先に失礼します」

ちゃんと挨拶して頭を下げて帰っていく。
聡明で、良い子だと思う。
きっと、いっぱい勉強して、成長していく。

私は、事務の専門なのに、専門の所でミスしてしまったのが、悔しい。
これから専務の秘書になるのに、これで大丈夫なのだろうか。
個人的な感情に、気を取られている。