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「会社でいい?」
サトダさんが聞いてくれる。
三木さんが下りて、二人だけになったので、気楽な話し方だ。
「はい。私、まだ途中の仕事があるんで」
「ん」
「本当に、すみませんでした」
改めて、タクシーの中でお詫びをする。
「珍しい。引継ぎ、やっぱり難しい?」
「そうですね。それも私の仕事なんですけど。結局、サトダさんに助けられないとだめでしたね」
いつまでも一人前ではない。
もちろん、会議をすっぽかしたという事だから、参加できなかった本人が出て行くのが早いのはわかるのだけど、私のミスを私が一人前にしりぬぐいできなかったのは、すこし痛い。
「悪い。それは、ちょっと悪かった」
なぜかサトダさんが謝った。
「サトダさんが謝ることじゃないですよ。私の力不足でした」
そう自分で言ってから、あぁっ、と思った。
力不足なのだ。
基本的な力量が足りない。
サトダさんのサポート、上手くいっていると思っていたけど、結局いつも助けられている。
秘書課への異動を勧められたのに、合点がいった。
秘書課はある種、事務の子には、名誉のある課だけど、サトダさんのサポートは、三木さんのように、総合職で上を目指す、対等に話ができる機転の利く子が良いのかもしれない。
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