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「離れるなんて言ってない」
サトダさんが、ゆっくり、しっかり言葉にした。
「異動を専務に示唆したの、サトダさんだって……」
離れないなら、なんで、異動させるのか。
よくわからない。
「ん。そう。合ってると思ったから」
会社の人材育成とかを優先したということだろうか。
「サトダさんのサポートだって、合ってると思ってました。いつも支えられてばかりだけど。うまくやれていると思っていました。結局、失敗しちゃったけど」
「俺は、支えるっていうか、邪魔しちゃうから。もっとできるはずだから、秘書課に行ったらいいと思う」
上司らしく諭すように言う。
「後のことは、もうちょっと待って。あんまり話しているとぼろが出て、上原に殺されるから」
「え?」
「エルマーが終わるまで、もうちょっと待って。ね?」
夜の朗読は、あとちょっとだ。
最近、サトダさんの出張のたびに読んでいて、本当にあと二章で終わりだろう。
それと、これとがどう関係しているのか、全く関係ないことなのか、サトダさんの口調からはわからない。
「……はい」
「ん。じゃ、戻ろう」
サトダさんの声は、小さい子供を諭すように優しかった。
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