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「浩輝くん!」
「茉理!! どうしたんだ? おまえも一緒の便で行くのか?」
キツネにつままれたようなポカンとした顔でわたしを見つめた。
「ううん、お見送りに来たの。浩輝くん、遅いよ。あと三十分しかないよ!」
「三十分もあれば大丈夫だよ」
そう言いながらも、立ち止まって話している時間はないので歩きながら話す。
「浩輝くん、あ、あのね、茉理、やっぱり、ボーカルは無理なの」
言いにくいことだけど、躊躇している暇はなかった。
「今更、なに言ってるんだよ。リハーサルには必ず来なきゃダメだぞ。早めに上京してくれよな」
思ったとおり浩輝くんは、まったく聞く耳を持ってくれない。
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