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「とにかくだ、どうして結婚を焦るのかが俺には理解できないね。一緒に暮らしてみてからでも遅くないだろ? そいつ、おまえの慰謝料を狙ってんじゃないの? 庶民にとって三億円は大金だからな 」
「違うよ、そんな人じゃないから」
わかってくれるとは思ってなかったけど、もしかしたら、 “ そうか、じゃあ、幸せになれよ ” って言ってくれる可能性だって、1%くらいはあるかもと期待して来た。
エスカレーターを登りきると、浩輝くんは無言のまま足早に歩き出す。
「ねぇ、待ってよ、ねぇ、浩輝くんったら!」
搭乗時刻が迫っているのだからのんびりはしてられないけど、浩輝くんが急いでいるのは怒っているからだ。
年度末のせいか、空港はいつもより混雑しているように見えた。
土産物を買い求めるたくさんの乗客とすれ違いながら、浩輝くんのあとを追った。
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