春のおとずれ

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「えーっ、本当。ありがとう!!」 茉理はそう言うと布製のトートバッグを持ってきて、分厚い紙の束を取り出した。 「このチラシ病院で配って欲しいんだ。茉理、張り切ってたくさん引き受けちゃったんだけど、ここのマンションにはもう全部配っちゃったし、クルマもないから大変なの」 分厚いチラシは三百枚以上もありそうだった。 「バ、バカ! 冗談じゃないよっ。チラシ配りなんか出来るか」 「手伝ってくれるって言ったじゃない。別に一人一人に配らなくてもいいの。病院の受付のところへおいておくだけで」 「無理だよ!」 「病院には病気の人が来るから、特に見てもらいたいんだ、このチラシ」 チラシにはこんな文言が記されている。 ○○党、国費の無駄遣い! 国の医療費、年間五十兆円!! 五つの政策 *食を見直し、病気にならない健康な身体を作る。医療制度の見直し。 *正しい情報の発信、共有 *誤った金融財政の見直し *教育改革 正しい歴史観と教育 *自給率の向上、地産地消を推進して一次産業を守る 「政策のひとつがね、食を見直すってことなの。人間の身体は食べ物で出来てるでしょう。 病気は身体に悪い食べ物が原因なの。だから病気にならない身体にして医療費を減らせば、他のことにたくさん税金を使えるようになるでしょう」 「医療費を減らすって、、そんなチラシを俺が配れるわけないだろ!」 「だって、病人を減らすのが潤一くんの仕事でしょ?」 ……こいつはとぼけているのか? なにもかも知ってて言っているのか? 「……俺の仕事は病気を治すことだ。とにかくだ、こんなチラシは病院には置けない」 こんな政党が躍進などしたら、病院の経営はすぐに傾いてしまうだろう。 俺はとんでもない嫁をもらおうとしているのかも知れない。
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