春のおとずれ

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「あなたはまだ勝手がわからないんだから、座っていてちょうだい」 すげなくそう言われた茉理は、リビングのソファに座った俺の隣に腰を下ろした。 お袋は運んできたコーヒーを俺と茉理の前に置いた。 「ありがとうございます。いただきます!」 茉理がすかさずそう言ってコーヒーを口にした。 俺もとりあえず一口飲み、シーンと張りつめた空気から(のが)れた。 「別にあなた方の結婚を許したわけじゃありませんからね。反対したってどうせするんだから何を言ったって仕方がないわ」 お袋は不貞腐れたようにつぶやき、フウッとため息をついた。 「あ、あの、おばさん、反対の理由はなんですか? 私のことが嫌いだからですか?」 緊張していると言いながらも、茉理は思ったことを率直に聞いた。 「それもあるけど、上手くいかないことが分かりきってるからよ。あなたにとってもこの結婚はマイナスになるだけよ。バツイチの女なんて、初婚の女と比べたら価値が下がるに決まってるの」 「おばさん、離婚を前提に考えるのやめませんか? 私たちずっと幸せに暮らします」 茉理の発言は俺にとって嬉しいものではあったが、今日はお袋の意見に逆らわないで大人しく聞いていたほうがいいような気がした。
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