春のおとずれ

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「あなたの経験は私の三分の一もないのよ。年長者の意見を甘く見ないで貰いたいわ。自分はまだなにも知らないっていう謙虚さが足りないのよ、あなたには」 悲しいけれど俺もお袋の意見と同じだった。茉理が結婚に失望するのは目に見えている。俺は度重なる結婚の失敗に後悔はしないつもりだが、茉理にとっては痛手となるだろう。 「初婚だと価値が高いとか、バツイチになると価値が下がるとか、茉理はそんなことで女性の価値を決める人と結婚したいとは思いません!」 茉理はお袋と同じく勝気な上に遠慮がなかった。やはり連れて来ないほうがよかったのかも知れない。 「あなたの理想は大層立派だけど、若気の至りで結婚して、シングルマザーになって苦労している女がどれだけいると思う? とにかく、私はちゃんとあなた達に忠告しましたからね。それでもするって言うなら痛い目に遭って気づくしかないでしょう」 口の立つお袋は負けてなかった。結局は茉理を不幸にしてしまう気がして、俺のほうが結婚に対して迷いが出てしまったほどだ。 「おばさんは私のためを思ってそう言ってくださるのだから、ありがたいと思って聞きますが、結婚はさせてください。もちろん失敗しないって断言は出来ませんけど、後悔はしないつもりです」
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