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「もういいかな、って、思うのよね」
ぽつりとこぼれた言葉は、決して聞き間違いなどではないのだと分かっていた。
聞こえていないフリなど出来ない。
顔を上げた私に映るのは、いつもと変わらない微笑みを浮かべた貴女。
「ごめんね」
「ッ……! 謝ることなど一切ございません!私はッ、私はご主人様が笑って過ごしていただけることだけが望みですからっ」
「……ふふっ」
他に何も望まない。貴女の笑顔が全て。
ただ一つ、我が侭を言わせてもらうとしたら。
「ご主人様。その、私も連れて行ってはもらえないでしょうか」
「リク? んー……そっか、そうだよね。とは言ってもこれは私のワガママなんだけどなぁ」
その我が侭を仰って頂けることが至上の喜びなんですっ。
ほんの少し目を閉じたあと、やっぱりご主人様はいつもと同じ優しい笑顔。
「もう、決めたことだから。今さらやめる気なんてないんだけどね」
「分かっています」
「うん。それじゃあリク」
「はいっ」
「さよならは言わない。またね、リク。また会える日まで。私の大切なお隣さん」
――瞬く間に世界は眩く煌めいて、跡形も無く消えてしまった。
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