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「姫。姫はこの街で暮らしているのか?」
「……ん」
無言を貫き通したかったけどイケメン王子の眩しさに負けてしまった。
かっぽかっぽと王子の愛馬に連れられていく先はどこか。超絶方向音痴な私は見慣れぬ景色に途方に暮れていた。
まあ女児を膝に抱いてご満悦の様子の残念王子相手では逃げる気力もなくなるというもの。
一応騎士団を鶴の一声で従わせる程度には人望はあるみたいだけど。
「やはり、名は教えてくれないのか……?」
「……メリーティア」
「っ!? も、もう一度」
「にどと言わない」
つーん。知らないよーだ。
「メリーティアか。良い名前だな」
「むぅ。聞こえてたじゃん」
「間違いのないよう確かめたくてな。聞き間違いではなくて良かった」
「そうですねぇー」
もう気を遣うのはやめた。
残念王子は気にしてないみたいだし、子供らしく振る舞うのだって面倒くさいし。
「ティア姫と呼んでも?」
「ひめじゃないもん」
「姫は姫さ。見た目だけの話じゃないからな」
「ふぇ? どーいう?」
一回りは違いそうだし端から見たら怪しさ全開ですけどね。
「姫。今回の遠征は1週間で終わりにするつもりだ」
「ふーん」
「1週間後。姫を迎えに上がってもいいだろうか?」
「ぁぃ?」
迎えにってなに。お嫁さん候補か何か? どう見ても王子様は既に成人していらっしゃるいい大人だと思うんですけど?
「言っただろう、年の差なんて関係ない」
「あるよ。あるんだよぅ」
「私なら姫も気兼ねなくいれて幸せに出来ると思うんだがな」
「まにあってまーす」
めちゃくちゃだ。
5歳児相手に求婚する残念なイケメンも、次期国王相手に知らん顔して対応する幼子も。
生まれ変わった私は一般庶民。
ちょーっと賢くて強いだけの普通の女の子でいたいのだ。
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