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格好良さも強さも事足りてるから癒やしを頂戴
懐かしい、と思った。思ってしまった。
確かに以前の私にとっては唯一とも言える存在で、少なからずあの子の幸福を願ってしまってはいたのだけれど。
この時になってもう一つ思い出したのは、あの子はとんでもなく面倒くさい性格をしていたってことだ。
「だってだって大好きだから!貴女が望むならオレは何だってするから!」
「……“リク”。ステイ」
「はいっ!」
放っておくと一人で喋り続けていそうだった。どうしてこんなにやかましいのか。
そして、今の幼女な私の身長だとしゃがみこんでも駄犬の顔の高さが全然変わらないことに、ちょーっとムカついた。
「どーいうアレか知らないけど、コレがあなたのじまんの弟なの?」
「フッ。不本意ながらな。一応言わせてもらうとこのような弟の姿は俺は知らなかったな」
「ふほんいながらね」
相変わらずしつこいくらいの忠犬っぷりに何故か頭をなでてしまっていた。
今世でも付きまとってくるなんて、と邪険にしようと思っていたのに。
「オレも姫って呼んでいい?」
「ダメっ! てゆーかしゃべっていいなんて言ってないでしょ」
「そんなの無理」
まだまだあどけなくて、我慢できずに頬を染めつつ笑顔いっぱいのリク。
女の子にモテそうだとは思うけど、抱きしめていいわけないでしょうが。
「すーてーい」
「むーりーでーす」
「ふぁ。なんでさっ!」
「そんなの貴女に会うためだけに生きてきたからに決まってるじゃん。やっとやっと、見つけた」
だから急に真顔にならない。王族っていうのは基本的に顔が整い過ぎているのよ?
「レイヴンだからね、よろしく。兄上、姫の名前を教えてください」
「“俺の”メリーティア姫だ。間違えるな」
「はいっ。メリーティアね。メリーちゃん?それともティアちゃん?やっぱり愛しのマイ・プリンセスって──おぅぁ!?」
「しゃーらっぷ」
認めよう。オーケー、この残念王子2号は紛れもなくかつてのあの子そのものだ。
それなら私は、飼い主としてきちんと躾ける必要があるわね。
「へへっ。3回目ともなればもう会うことはないかな。だいじょうぶ。ちょーっといたいかもしれないけど、次に目をあけたときにはステキなセカイが広がっているよ」
「はっ、はっ、はっ」
「さいごにのこすことは」
「ご主人様!大好きです!」
「ていっ」
「ふんもっふ!!?」
今の私に出せる全力で殴った。殴り飛ばしてやった。
もう、悟ったんですよ私は。
残念すぎることこの上ないけど、血筋とか諸々込みで考えてみるとね。
見た目幼女な私でもどれだけ好き勝手したって、彼らがしっかり隠れ蓑になってくれるでしょう、と。
まず始めに駄犬“レイ”。君は私が本調子を取り戻すためのサンドバッグになっちゃいなよ。
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