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「それでメリーちゃん、あの子達のことはどう?」
「ふぇ?」
どうって何がです?何がそんなに嬉しいんです?
「第一王子はもう正直言うところはほとんどないわね。顔も申し分ないし、実力のほどもこの数年で証明済みだし」
ぽけーっと女の顔になったママのことを見ていた。
「ただ第二王子のほうも気になるのよね。年が近いのももちろんだけど、第一王子は良くも悪くも噂通りなのよね。弟君には飛び抜けた何かがあるかもしれないし」
いやいやアナタの娘はまだ5歳ですよ?まさか母娘で恋愛トークが始まるなんて思いもしませんですよ。
カッコイイって思わないの?とママが笑う。
そこはええと、どうですかねぇ。おっしゃるように私の目にも彼らは器量良しな部類だとは思う。思うけどさぁ。
「メリーちゃんはまだ幼いから分からないかもしれないけど恋愛は早い者勝ちだからね。気が付いた頃にはもう遅いのよ」
「……あい」
別にいいですけど、って思ったけど頷いておいた。
娘の恋の行方を見守るのも親の楽しみかもしれないけど、どうか期待しないでくださいお願いします。
「ちなみに王女様はメリーちゃんと同い年だったはずよ」
「ふぇ!?」
「えっ?」
えっ、じゃなくて。
それ重要。年の離れたおじさんのことなんてどうでもいいから。お友達になれそうな可愛い女の子の話のほうが大事。
「まあ確かに王子様と婚約すれば王女様とも義理の姉妹になるものね。仲良くしておいて損はないわ」
「ん」
そういうことにしておきましょう。
「そうと決まれば今度王女様をお招きしようかしら。早い方が良いわよね?」
「ふぇ? や、ちょっ」
「それとメリーちゃんのドレスも準備しなくちゃ。まだまだ出番は先のことかと思っていたんだけれど。ふふっ。楽しみだわ」
「あのっ。ちょっとまって」
そんなところで権力発揮しないで。ご令嬢扱いも勘弁して。
私の抗議も空しくママはすぐに部屋を出て行ってしまった。
あんなにもお転婆娘とは。両親が結ばれた所以を垣間見た気がした。
「ごめんなさいお嬢様。奥様がああなってしまっては止められるのは旦那様くらいのものなんです」
「ケルソンしゃん」
「はい。大丈夫ですよお嬢様。お教えしたいこともたくさんありますが、第一にお嬢様のご負担にはならないようにと我々も心掛けておりますから」
「……ありがと」
使用人は出来た人達ばかり。私自身も見た目通りに幼いわけじゃあないものね。
前世は死んでも願い下げだった貴族社会だけど、覚悟を決めて乗り切ってみせようじゃないの。
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