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「こんな所でピクニックとは楽しそうですね。オレも混ぜてもらえます?」
トレーニングの真っ最中に呑気な声で横槍を入れるのは、私のよく知るアイツくらいしかいない。
「良いところに。ちょうどお昼前に軽い運動でもと思ってたところなの」
「軽く?それは冗談きついんじゃないですか、姫」
「冗談?そんなのレイが立派な王子様をしていることを言うの」
「大変失礼いたしました」
ちょっと苛立ちを込めてみせると金髪頭を惜しげもなく下げてきた。
はいはい。もういいから。
そんな簡単に頭なんて下げていいものじゃないって言ってるはずなんですけど、レイヴン王子。
「オレが跪くのは姫と両親と兄上と妹くらいのものですよ」
「勝手に家族の一員にしない」
「え?してませんよ。まあ近い将来そうなっているでしょうけどね」
「……もういいから黙って」
好き勝手うるさい。体格差のせいか何か、ずいぶん言うようになったじゃないの。
どうして私より先にレイが生まれてしまっているのか、納得がいかなかった。
「レイお兄様!」
「やぁ可愛いリナ。姫には優しく指導してもらっているかい?」
「もちろんだよ。メリーちゃん、言葉はきびしいけどすごくすごく優しいもん」
「ふふ。そっか。姫に鍛えてもらえるなんてリナは幸せ者だね」
「うんっ」
言うほどではないけどスパルタにする気もないからね。
ある程度自力で出来る力を身に付けてもらって、それ以上のことは私が何とでもしてあげられる。
「それにしてもずいぶん暇しているみたいね」
「まあ学校も無事卒業したので。兄上が跡を継ぎますから、オレの役目はその補佐をするくらいですよ」
「ふぅん?」
「あまり派手に動くとややこしいことになるので。どうせなら旅に出て世界一周なんてのも良いかもしれないですね」
「何それズルい」
世界の広さはよく知っているつもり。引きこもってばかりだったけど。
近くの可愛い子も悪くないけど、もっともっと見て回りたいじゃない?
「フッ。それでしたら姫、オレがエスコートして差し上げましょうか?」
「え、いらない」
「──」
「私は私で好きに行きたいの。それに行くならサフィーを連れて行くから」
「メリーちゃんっ」
旅に出るなら可愛いサフィーと一緒には当然でしょ。
それにレイと私じゃぁ、きっとつまらない旅になると思うからね。
何もかも予定通りにじゃなくて、楽しい旅にはちょっとしたスパイスが必要じゃない?
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