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「ただいまー……」
お、怒られたりしないかな。
もうお空は夕焼け色に染まってしまったし。着ている服だって汚れは落としたけど所々穴が空いてしまっているし。
「メリーちゃん?」
「ふぇっ!? た、ただいまママ」
「……」
な、何か言ってくれないとその、困りますっ。
「いいえ。おかえりなさいメリーちゃん。疲れたでしょう?」
「ふぇ? いや、えっと……ぅん」
「おかえり。ちゃんと暗くなる前に帰ってきて偉い偉い」
「え、えへへ」
気付いてない?
ううん、気付いているんだよね、言わないだけで。ママは優しいから。
ごめんなさいって言わなきゃ。大丈夫大丈夫なんて言えないよ、こんな小さな体。心配するのは当たり前だから。
「あの、あのねママ」
「なぁに?」
「ごめんなさい。およーふく、こんなにしちゃって」
ちょっと転んじゃって。とかこんなになってたら通用しないもん。
じゃあ何をしたの?って聞かれたら、答えられないけれど。
「ふふっ。メリーちゃんってば」
「ふ、ふぇっ?」
えっと、それでもやっぱり撫でられるっておかしくない?
いやおかしいよ。ママ、私はまだ5歳だよ?包丁だってまともに触らせてもらえない幼児だよ?
「メリーちゃんがお転婆なの、今に始まったことじゃないでしょ? 一度日が落ちても帰って来なくて大騒ぎしたこともあるんだから」
そ、そうでしたっけ?
幼いメリーティアの記憶を辿る。
……あった。かくれんぼしててあまりに上手に隠れたものだから、友達みんな帰ってしまっても気付かず一人隠れてた。
他にも。魔物を倒したことが実はあった。無自覚でも私の力は発揮されていたみたい。
ただ親には説明が付かなくてワンちゃんと遊んでたなんて言っていたんだけど。
「メリーちゃんにお願いするのは一つだけよ。無事に元気でお家に帰ってきてってね」
「ママ……?」
いやいやこんな小さい女の子をそんな簡単に自由にさせちゃいけないと思うんですけど。
私、だから? 普通の女の子には出来ないようなことが出来るから、とか。
それとも単純に5歳児には難しいから言わないだけとか。
でも、そう言ったママの顔がほんの少し寂しそうに見えたんだ。
答えられず抱きつくこともできないままの私をママは抱き寄せた。
優しく優しく撫でられる。
「元気一杯遊んでずっと笑顔でいられたらそれでいいの。健康で立派に大きく育ってくれたらそれで十分だから。いつどんな時でもママはメリーちゃんの味方だからね……って、まだ難しいかな。ふふ、メリーちゃんが元気で良かった」
囁くように伝えてくれた言葉を私は絶対に忘れない。
大きくなったらたくさんたくさん親孝行しよう。
そう胸に決めて大好きなママにぎゅっと抱きついた。
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