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──お、おい人が倒れているぞ!?
だんだんと辺りが騒がしくなってきた。
確か街中では普通魔法を使うのは禁止されているんだったっけ?
やられた小太り男はちょっと置いておかれてて、それでも犯人探しは大事みたい。
まあさすがにこんな子供を疑ってかかることはないと思うけど。
「おや? お嬢ちゃん、こんなところで迷子かな?」
そういえば騎士団が滞在しているんでしたね。
無駄に輝いた鎧を着て笑顔を振りまく姿に、ちょっとイラッとした。
私がカッコイイと思うのは私より強い者に会った時だけだ。
「んーん、だいじょぶ」
「おーい誰かこっちに来てくれ。迷子の女の子を見つけたんだ。保護しようと思う」
「や、ちょっ」
いいって言ってるのに。仲間なんて呼ぶなぁ。
「お、おいカイト。さすがに任務中に誘拐なんてダメだろ」
「はぁ!? な、何を言うんだよ。オレは迷子を見つけたから保護しようと思って」
「でもその子何だか嫌がってるみたいだけど」
「えっ。こ、怖くないよ? 大丈夫大丈夫。こっちにおいで」
その台詞は全然大丈夫じゃないからね。
ぞろぞろと集まる団員に囲まれて、改めて思うけど今の私ってすごく小さいなぁ。
騎士団は若い子達の憧れなんて言うけれど、こんな小さい子には恐怖でしかないように思うんだ。
「何をしている」
撒こうと思えば撒けるけど目立つし、かといって彼らに保護されるのは何か許せないし。
と戸惑っていると青臭い団員達を諌める声が響き渡った。
「「お、王子殿下!?」」
「す、すみません。迷子と思しき女児を発見したもので」
「この場は危険ですので保護しようかと」
ちょっとちょっとこんな幼い子供相手に色々と密度が高すぎですよ。
「迷子一人に四人も集まる必要があるか? それともこの少女が何か知っているとでも言うのか?」
その言葉に比較的冷静に状況報告していた二人も固まってしまった。
ええと、王子様は冷酷なアレですか。それとも単純に傍若無人な感じですか。
思わずどんな顔をと見上げてしまった私と彼の目が合った。
まあ、顔は悪くないかもね。
「ふん。ならば私が面倒を見よう。お前たちは被害者の男を自宅まで運んで行け。それでこの件は終わりだ」
「えっ!?」
「なんだカイト。言いたいことがあるのか?」
「い、いえっ。かしこまりましたっ!」
ほぇ? あ、ちょ、ちょっとまっ──
「ずいぶんと肝の座った娘だな。フフン。俺の名前はカーライルと言う。小さき姫よ、俺を知っているか?」
ふぁっ。し、知らないけど今知りました!
というか降ろしてー!
体は小さくっても心は大人。抱っこは恥ずかしいのー!
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