Chapter1☂︎*̣̩・゚。・゚

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 暗いかどうかはその人の感じ方次第だから何とも言えないが、少なくともお高くまとまっているつもりはない。口下手で感情表現が下手というのは家族からも言われているし、きっとそうなのだろう。  どの言葉も言われ慣れているが、慣れているからといっていい気分のするものでもない。  とりあえず長谷に奢るのはラーメンから菓子パンに格下げだ。  そんなことを考えつつ店の外に出て空を見上げると、どんよりとした雲が空を覆っていた。  まだ夕方で、季節的にも普段ならまだ明るいはずなのに、なるほど薄暗いわけだ。 「雨、降ってきませんように」  私が一人暮らしをしている大学から徒歩十数分圏内のアパートは、この居酒屋からは少し遠い。  しかしそんな願いを口にした数十秒後にはぽつりぽつりと雨がちらつき始め、すぐにバケツをひっくり返したような勢いに変わった。  まずい。アパートまでまだまだ距離がある。一瞬迷った後、すぐそこにあったコンビニに駆け込んだ。  店内は私と同じように雨宿りに来たと思われる人たちの姿がちらほら見受けられた。  雨が止みそうならこのまま時間を潰そうかと思ったが、どうやら止みそうにない。  早く帰りたいし、安いビニール傘を一本買って帰ろう。そう思って傘売り場へ行くと、一番安い五百円のビニール傘が一本だけ残っていた。  運が良い。いや、土砂降りに見舞われた時点で別に運は良くないか。  複雑な気分で傘をレジに持って行った私だったが、手動のドアを開けながらバッグに財布をしまったとき、驚愕の事実に気がついた。  傘、あるじゃん。  高校生の頃から愛用している、チェック柄の折り畳み傘がバッグの奥底に入っていた。  何たる失態。五百円もあれば少なくとも二食分の食費にはなった。
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