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日差しが眩しくて、日傘代わりに使おうとバッグの中にあった折り畳み傘を取り出す。壊れかけの傘を慎重に開きながら、ふとこの間ビニール傘を渡した男性のことを思い出した。
あれはもう一ヶ月近く前か。
コンビニの軒下で、雨に濡れるのを気にする様子もなくぼんやり空を見ていた男性。あのときは泣き出すのではないかと思うほど悲しそうにしていたが、今は元気にしているだろうか。
……まあ、今は一度会ったきりの人のことを思い出している暇があったら自分のことを考えるべきなんだけれど。
ようやく開いた折り畳み傘をさし、アパートに戻ってきた私は、自分の部屋に行って冷蔵庫に優羽さんからもらった食料をしまうと、すぐに一階にある大家さんの部屋へ行った。
このアパートの大家さんは、五十代後半くらいの女性で、優しく気さくな人なので住人に好かれている。とはいえ人とコミュニケーションをとることが得意ではない私は他の住人と違い、いつもは世間話などもせずせいぜい挨拶をする程度だ。
大家さんの住む部屋のチャイムを押すと、ばたばたと足音がして、彼女はすぐに玄関から出てきた。
「直島さんかい。ああ、家賃だね」
「あ、えっと」
私は、今お金が足りていなくて少し待ってもらえないだろうかと尋ねる。
実を言えば、このお願いをしたのは初めてではない。前にも二、三回同じお願いをしたことがある。
だからだろう。大家さんは心配そうに眉を寄せて言った。
「直島さんのことだから約束を守ってくれるのは知ってるよ。だけど、お金が足りないならご両親に相談したりしなくて良いのかい?仲が悪いわけでもないんだろう?」
「まあ……」
「事情があるのか知らないけどさ。学生のうちは親に頼ったって誰も文句は言わないだろうけどねぇ」
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