城門

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 城門の前には、腰を下ろす場所もないほど大勢の人が集まっておりました。今日は小さな王子の一歳の誕生日であり、領民の前に初めて姿を見せる、お披露目(ひろめ)の日でもありました。  王子と妃、小さな王子が城門の上に姿を現しますと、人々は熱狂しました。 「見よ、小さな王子の愛くるしいこと!」  門前に(つど)った人々は王子一家の幸せそうな様子を見て、この国の将来も明るい、と胸に希望を抱きました。  ただひとり、物陰から一家の姿を盗み見ては、その度に苦しげなうめき声を上げる者がおりました。王子妃となった娘の、母親です。  小さな王子のお披露目をすれば、行方知れずの母親がやってくるだろうという、王子の考えは当たりました。娘に会いたい気持ちを必死でこらえてきた母親でしたが、初孫の姿をひと目でいいから見たい、という願望には抗えなかったのです。
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