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妃と母
お披露目が終わると、衛兵と小姓たちが集まった人々を解散させました。
門前に人がいなくなると跳ね橋が降り、王子一家が出てまいります。
ひげ面の衛兵に伴われて母親が姿を見せると、居合わせた人々は息をのみました。
美しい王子妃と似ても似つかぬその顔は、シワとシミとアザだらけでした。鼻柱は折れ、垂れたまぶたでふさがりかけた両眼は白く濁り、歯の抜けた口はだらしなく半開きの有り様です。
首すじはコウモリの翼のように皮が張っていて、背中は曲がり、ひざは小刻みに震えておりました。まるで100年を生きた老婆のような姿に、本当に妃の母親なのか、と誰もが思いました。
「妃よ、この方でよかったのか」
「私のお母さんに、間違いありません」
口を開かず、こちらをじっと見上げている母の目を見返しながら、娘は答えました。
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