妃と母

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 王子はけもののようなむっとくる臭気に息を詰まらせながらも、詫びの言葉を述べました。 「このような場所で申し訳ございません。魔女の呪いが消えるまで、城内にお招きすることが出来ないのです」  つんと鼻をつく匂いに咳き込みつつ、義母に向かってたずねました。 「今なにか、望みはございませんか」 「孫」  母親の割れた唇から、音が漏れました。 「分かりました」  周囲から湧き上がる反対の声を鎮めて、王子は一歩下がりました。小さな王子を抱いた妃が母親に近づきます。 「お母さん、あなたの孫です」 「孫を」  抱かせてほしい、とでもいうように、両手がおずおずとさし伸べられました。娘は一歳になったばかりの王子を抱き直して、母にさし出そうとしました。  ところが――、 「ごめんなさい、お母さん」 ――娘はわが子を胸に抱き寄せると、母に背を向けてうずくまってしまったのです。
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