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村から王城へと向かう、踏み固められた道を進んでいくと、前方に黒いしみのようなものが見えました。
娘は急になんだか恐ろしい気持ちになって、母の後ろに隠れます。
「どうしたの。こわいものでも見たかい」
母が娘に問いかけると、あたかも答えを告げるかのように黒いしみが近づいてきました。まばたき一つの間に、母親と同じくらいの背丈となって、二人の目の前に立ちふさがったのです。
女性はふだん見かけることのない、帽子からブーツの先まですべて黒ずくめという出で立ちでした。見るからに不気味であり、不吉でさえありました。
鼻すじのとおった顔の、ほほのたるみと骨ばった首が、娘に家で飼っているにわとりを思い出させました。
娘は知りませんでしたが、目の前に現れたのは城を追放されて間もない、黒衣の魔女だったのです。
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