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女神が語るところによりますと、母親は魔女のかけた呪いを解くために、この社へ息せききって駆け込みました。ところが女神といえど、魔女の呪いを損なうことは出来なかったのです。
「代わりに、呪いの相手を交代させた。王子と、おまえの母とを入れ替えたのじゃ」
女神は呪いを捻じ曲げました。娘が幸せになると母親が不幸に、母親が幸せになると娘が不幸になるように変化したのです。
「それなら、それなら、私とお母さんがいっしょにいれば、幸せと不幸せがぶつかって、あの……『おあいこ』になりませんか」
娘はけんめいに考えたことを口にしました。
「おまえは聡い娘じゃな」
女神はため息をつき、首を左右に振りました。
「だが、幸せでもなく不幸せでもないというのは、十分に『幸せ』と言えまいか」
魔女の呪いは、幸福と不幸のあいだといった、あいまいを許さないのでした。予言で結ばれるはずの王子と娘をとことんみじめにすることが、魔女の目的だったからです。
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