女神

2/3
前へ
/24ページ
次へ
 女神が語るところによりますと、母親は魔女のかけた呪いを解くために、この社へ息せききって駆け込みました。ところが女神といえど、魔女の呪いを損なうことは出来なかったのです。 「代わりに、呪いの相手を交代させた。王子と、おまえの母とを入れ替えたのじゃ」  女神は呪いを捻じ曲げました。娘が幸せになると母親が不幸に、母親が幸せになると娘が不幸になるように変化したのです。 「それなら、それなら、私とお母さんがいっしょにいれば、幸せと不幸せがぶつかって、あの……『おあいこ』になりませんか」  娘はけんめいに考えたことを口にしました。 「おまえは(さと)い娘じゃな」  女神はため息をつき、首を左右に振りました。 「だが、幸せでもなく不幸せでもないというのは、十分に『幸せ』と言えまいか」  魔女の呪いは、幸福と不幸のあいだといった、を許さないのでした。予言で結ばれるはずの王子と娘をとことんみじめにすることが、魔女の目的だったからです。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加