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ひと目会って、ふたりは互いに恋に落ちました。三月が経つころ、王子は娘のことばかりを考えるようになり、四度目に会ったときにプロポーズをいたしました。
五歳で生き別れた母親のことを思い、娘は王子の申し出を断り続けました。彼に恋心を告げられただけでもこの上なく幸せなのに、もし結婚などしたら、どれほど巨大な幸福を手に入れてしまうでしょう。
「お母さんにふりかかる不幸の大きさを考えると、とてもお受けできません」
王子の六回目の来訪で娘はついに、母と自分にかけられた呪いについて打ち明けました。
「黒衣の魔女が追放されたのは、私が七つのときだ。まさかそなたたち母娘に害を為していたとは思いもしなかった」
城に戻った王子は八方に人をやり、娘の母親と魔女を探させました。ですが国内にも、九つある隣国のどこにも、ふたりの姿はありませんでした。
娘はとうとう、王子の求婚を受け入れました。断っても、断っても、あきらめない王子の愛に、心を動かされたのです。
「君が幸せを拒み続けていると知ったら、君のお母さんは自らすすんで、より不幸になろうとするのではないか」
王子の言葉に、娘は涙を浮かべて首を縦に振りました。
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