誰かが書いたプロローグ

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誰かが書いたプロローグ

【慈悲の反対は憎悪【第一幕】】 プロローグ/ (効果音は雨。舞台には真ん中より舞台向かって右に一台の公衆電話BOXだけがスポットライトを浴びて佇んでいる。) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー (女が左のすそから走ってくる。切羽詰まったように怯えて。一枚のメモ用紙を握りしめ焦りながら電話BOXに入る。公衆電話に受話器を取り、お金を入れてメモ用紙を見ながらダイヤルをする。すると舞台の左から尾崎がスッと現れる。二つ目のスポットライトが尾崎を照らす。手には携帯電話を持っている。尾崎が電話を耳にあてる) 女  /もしもし、もしもし?助けてください、ここに電話したら復讐してくれるって聞いたんです…!阿修羅っていう人が助けてくれるって…!お願いします、私復讐したいんです! 尾崎 /落ち着いてください、…本当に復讐したいんですか? 女  /はい、あいつらに復讐できるのだったら私、死んでも構いません。生半可な気持ちでは電話してはいけないと、この番号を教えてくれた人にも聞かれました。でも、もう私の望みはこれしかないんです。 (尾崎と女が話をしている時、一番前客席から背の高い男が立ち上がる。スポットライトは当たらない。雨の音も鳴り止まない。ただ静かに男は客席中央の通路を歩いていく。尾崎の言葉が聞こえる時、男は入口の扉に手をかける) 尾崎 /では合言葉をお願いします。あなたが本当に彼の力を借りたいのなら。 女  /はい 尾崎 /…慈悲の反対は? 女  /憎悪! (女の言葉と同時にスポットライト、雨の音が消え、男が入り口を開け放つ。自然光が客席に入る。男は開け放った扉を閉めもせず、カツカツカツ…と足音だけを残して行ってしまう。反動で扉がバン、と閉まる。暗転のまま第二幕が始まる) 慈悲の反対は憎悪【終わり】
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