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上層部が出した答えはイエスだった。
大半の人間達は、吉祥天の懐妊に、肯定的だったがそうでないものもいる。
インドラ、と名付けられた男だ。この男は大男で男も女も犯す色狂いの上に強欲で陰険で執念深い性格だったから、ずばぬけて美しい吉祥天にも色目や力尽くで物にしようとしたが、いつも毘沙門天に軽くいなされていたのだ。嗚呼、許せぬ、憎い憎い、と思っていたのだ。それにこの男はもう何年も「壺の中」にいた。
此処は99人殺せば出ていけるが、また逆もしかりなのだ。世間になんの未練もなくば、此処にいたって天国だと思う連中もいる。インドラはそういった類の長のような存在だった。
インドラがあの醜悪な計画を実行したのは、吉祥天が身篭って、後一月程で子供が産まれるという頃だった。試合が始まろうというとき、ある男が毘沙門天に透明の液体が入ったグラスを差し出した。
「あんたのことが好きさ。貴重な酒だがあんたの勝利を願って。景気づけにぐぐ、とやっておくれよ」
毘沙門天は疑わなかった。元々此処へ来たのも不幸な裏切りを受けたからだったが、その性格故に毘沙門天は男らしい顔をにこりとほこらばせて酒をぐいっとあおった。
それは即効性の神経毒だった。
試合の相手は勿論、インドラだ。
インドラはその場に膝から崩れ落ち、動けない毘沙門天を引きずってリングまであがらせると、吉祥天の悲鳴が響く中、毘沙門天を犯した。手ひどく、赤ん坊が人形を手加減なく振り回すように、自分の桁違いな肉棒で毘沙門天を突き刺した。
普段、リングの回りに「壺の中」の住人共が集まって、やれ殺せだの、潰せだの野次を飛ばしているが、その時ばかりはしん、としたものだった。審判が止めようとすると、腰を振りながらインドラは笑って言ったよ。
「こいつは犯し殺してやるのさ。殺し方はどういうやり方だっていいんだろう?」
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