阿修羅がきた

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空き地に置かれていたトラックが動き出す。それを外で見ていた尾崎が煙草を咥えながら運転席に向かって手を振った。山田と花山が手をあげる。 尾崎はこの復讐に参加しない。なぜかと言うと、もし生きて帰った者たちの帰る家になるためだ。尾崎は手帳に走り書きをした。 【現在は夜の11時。今日、藤堂の屋敷に乗り込んで藤堂の首を狩る】 走っていく、男達を乗せて夜の道をトラックが駆け抜ける。 荷台の男達は息を潜める。別に潜める必要もないのに、肺に空気を吸い込むことを最小限に。 胸がなぜだか高揚している。 脳で考えているのではない。 ただの血を送り出す器官が高鳴っているのだ。 「俺、今どきどきしているよ」 仁が隣にいる亀岡に笑ってみせた。そうすると隻眼の亀岡は俺も、と微笑み返した。 「俺もだ、…なあ仁」 「うん」 「帰ったらなにをしよう」 「帰ったら?」 「ああ」 「…風呂に入りたいな。ここは暑い」 「そうだなあ」 「それから」 「ああ」 「子供でも作るか」 「そうだなあ」 亀岡はおかしそうに笑った。なんだか本当にそうできそうな気がしたので、真剣に考えてみた。 他の男たちもなにかを考えた。 どうせ二分の一なんです。 どちらかなんです。 生きるか、死ぬかではないですか。 とても簡単な選択です。 行くぞ、花山がアクセルを踏み切って唸った。目の前に藤堂の屋敷が見えた。だからアクセルを全開にして、巨大なトラックが突っ込んだ。
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