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上座の藤堂だった。
「泣けるねえ!素晴らしいよ!君達は理想の兄弟分だ。だから、チャンスをあげるよ。みんなが幸せになれるチャンス。でもやるかどうかは君達次第だ」
「藤堂さん」
「でも、私はもう、藤堂を私の下には入れないと言ってしまったからね。男に二言はあってはいけない。だから、こうしないかい?」
藤堂の顔が満面の笑みをたたえる。毒々しい花のように派手な、笑顔。いけない、と佑一は思った。
(もしかしたら、俺は、最悪の場面を作ってしまったのではないか)
だが、もう遅い。藤堂は宣言した。
「佑一君、雨洞を君の女としてなら、一緒にこちらに引き込んであげるよ。住まいも提供しよう。仕事は、ここにいる三浦と同じ地位をくれてやる。どうだい、それなら、問題ないだろう?」
問題は、ありすぎた。雨洞は一瞬なんのことだかさっぱり解らない顔をしていたが、次第にはっきりしたのか、顔を真っ赤にして馬鹿馬鹿しい、と吐き捨てた。
「藤堂さん、俺は、いや、私は」
「雨洞には発言権なんかないよ。私は佑一君に聞いているんだ。どうだい、雨洞を自分の女としてやるかい」
「…もし、しなければ、」
「雨洞の両手の指を三本ずつ貰おうかな。チャンスは与えたからね。チャンスを逃した時の罰を重くしないとチャンスじゃなくなってしまうからね」
だから、これは一択なのだ。
そう藤堂は言っている。これはチャンスでも、ゲームでもない。ただの残酷な処刑だ。ルールは勝手に藤堂がきまぐれに作る。勿論佑一達に不利になるように作られたルール。
長引かせてはもっと酷くなる。佑一は決断した。
「はい、雨洞さんを俺の女にします」
「佑一、手前!」
雨洞が佑一の胸ぐらをつかんで怒鳴る。
「生き恥晒してまで、生きてえなんて思った事なんかねえぞ!」
それを正座をして並んでいた者達が取り押さえる。藤堂は、感極まったように笑い出す。あはは、はあ。
「じゃあ、佑一。君が本当にそう出来るのか、試してみよう。ここで雨洞を女にするんだ。そうしたら、私は君を好きになれそうだよ。ねえ、誰が主人か、教えてあげなさい。佑二君は見ていてもいいことにしよう!だって、雨洞は佑一の女だものね!」
佑一、いっそ殺せ!
大勢の人間に押さえつけられた男が喚く。
その顔面を、佑一は思い切り殴った。その拍子に口の中が切れたのだろう、雨洞がその巨体を血をまき散らしながら暴れるので、もう一度強く殴る。もう、お願いだから黙ってくれ。
あんたの為だ。あんたの為にこうしているのだ。拳にその思いを乗せて殴るのだけれど、そういうのはちっとも伝わらない。雨洞の顔面が酷く腫れるだけだ、鼻血や切れた口の出血で酷い顔をしているのに、男はもがく、もがきまくっている。五、六人で押さえつけているというのに、時々反り返った雨洞の体がぐうっ、と浮くのだ。殴っても、殴っても。人は案外丈夫だ。いっそ気絶でもしていてくれれば、事は済むのに。思わず佑一は、雨洞の首に手を巻きつけた。両の親指でぐう、と喉仏の下を押すと、ビクッ、と雨洞の体が震えて悲鳴のような乾いた音が出る。危ない所まで首を絞めてから、手を外す。
佑一の脳裏にふとよぎる。…こんなことまでして俺は、この人を助けなくてはいけないのか?
いや、そうしなくてはならないのだ。この人は俺の恩人なのだ。どんなことがあっても恩を返す。そう思いながら、わざと冷酷そうに突き放す。
「うるせえんだよ、お前なんか、お前なんか、すみません、お願いします、ありがとうございます、解りました、この四つを言えればいいんだよ。他に喋るな、お前は俺の女だ、俺のもんだ」
「佑一、殺してくれ」
「だまれ、頼むから黙ってくれ」
「ふざける、んじゃねえええ!どけ、離せ、お前ら皆、ロクデナシだ畜生!地獄に落ちろ!」
押さえつけていた男の誰かが、堪らずに雨洞の口を塞ぐ。暴れる雨洞は、まるで死ぬことを悟ってあがくまな板の上の魚のようだ。本当は生かす為の行為だのに、雨洞は拒絶する。
妥協することを知らず、人の気持ちも知らず、この儀式から逃れようと、数人で押さえつけても手に余る程である。
「おい、佑一。早くやってくれ。…頼む、おい、お前。雨洞のズボン下ろせ。俺は肩を押さえているから」
「あ、ああ解った。俺がベルトを剥がしてズボンと下着を脱がせるから、そうしたら足をもて」
「解った、すまねえ、…な、なあ雨洞さんよ。あんたの為だ、あんたの為だから。じっとしてろ、ケツを犯される位で命が助かるんだから安いもんだろう」
「そ、そうだよ。すぐだ。ちょっとチクッとするだけだからよ…。頼む、お前の弟分の心意気、解ってやってくれよ」
「う、うううううううう!」
雨洞が吠える。やめてくれ、頼む、そんなことで命に代わるなら、殺してくれ。
腫れ上がって、元の顔が解らない雨洞の顔から涙が流れる。悔し涙だった。だが、それに構えぬ位、佑一は無我夢中だった。ズボンのジッパーを下ろして自分の男根を擦るが、ちっとも勃ちあがらないのだ。畜生、早く、早く。頼むから勃ってくれ。焦りはもっとも、それを駄目にする。雨洞を押さえ込んだ一人が、馬鹿野郎、と叱責した。
「とりあえず突っ込め!いいか、半勃ちくらいなら入れちまえばいいんだよ、それから腰を振れ、なんとかなるから」
「でも、」
「早く楽にしてやってくれ!」
その怒鳴った顔の面々を見れば、見知った顔だった。藤堂に従った中には、雨洞と親しかった男達もいるのだ。荒い息を立てながら、佑一は雨洞に近づいた。気配に気づいて雨洞が暴れる。悲鳴、懇願、塞がれた口から歯を出して塞いでいる指をかじったのか、口を塞いでいた手が一瞬、退いた。途端に雨洞が舌を歯で噛み切ろうという仕草を見せた為、数人かで口をこじ開け、ハンカチやネクタイを詰め込んだ。
「早くしろ!」
「ん、ぐぐぐぐぐぐぐ!」
そして佑一が覆い被さる。自分のものを雨洞の肛門にねじ込んだ。数人がかりの、陵辱だった。
必死で腰を振る。堪らずに雨洞が口に詰まったものを吐き出して叫んだ。
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