紺色のハチマキの彼

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 圧し掛かる圧力が半端じゃない。大男に押さえつけられているみたいだ。腹は曲がって、脚も伸ばせなくて、どんどん僕の身体は縮んで丸まっていく。脚の動きはひどくのろい。もう歩いているぐらいのスピードだ。苦しい。曲がった身体は空気をうまく取り込んでくれない──────。 「哲哉!顔を上げろ!苦しくても前を見ろ!」  誰かの声がする。  聞き覚えがあった。  真後ろからのバイクのエンジン音で思い出す。  その声は父だ。  イラっとした。またバイクで来てんのかよ。あれほど言ったのに何で言うこと聞かないんだよ。  僕は顔を上げた。空気が入ってきたように感じた。でも相変わらず苦しい。  前を見てギョッとした。前の彼の姿は凄く小さかった。信じられなかった。彼はもう坂の頂上にいた。そして頂上の向こうへと消えていく。 「頑張れ!あと半分!もう一回これを頑張ったら終わりだぞ」  愕然とした。  まだ僕は半分。  前の彼はもう坂道を越えている。あまりの力の差に僕は途方に暮れる。馬力が違う。力量の差に僕の心は簡単にへし折れた。脚がさらに重く感じた。もう坂道を転げ落ちてしまいたかった。
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