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賢人が手を振ってる。
あそこがゴール。もう少し。
幸いにも後は下り坂だけ。もう下りに身を任せるしかない。とにかく転ばないように意識して前に進んだ。手を広げる賢人の姿が少しずつ大きくなっていく。賢人のよく通る声も聞こえてきた。
「タスキを外せ!」
そうだった。タスキがあった。僕は肩に掛かったタスキを外して落ちないように拳を作る。
賢人が腕を伸ばしてくる。そこに向かって腕を伸ばす──────。
手からタスキが抜けていくと、ダッと賢人が勢いよく飛び出した。背中はどんどん小さくなっていく。崩れ落ちそうになったけど、すぐに誰かが支えてきた。
「ここは危ないから。ほら、立って」
その声の人に連れられて歩道に移動させられた。その人は適当に僕を地面に座らせると、さっさと戻っていった。
「2番!9番!6番!」
拡声器の大声が空に響き渡っている。
歓声や怒鳴り声に拍手と、様々な応援が中継所を賑わせていた。
その中継所からちょっと離れた所に父がいた。
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