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新藤孝樹
「新入生の皆さん。今日からあなた達は、この学校で人生と言う名の本の、大事な一ページをめくる日々を送る事になります。そんな君達の物語に携わる事ができる私は、とてもとても嬉しく・・・・・・・」
溜息を吐いた。
人生の所を特に強調していた。決まった、と言わんばかりの悦の入った表情だ。芝居臭い校長先生の演説に、僕はもう一回溜息を吐いた。
後ろから肩を叩かれる。振り向くと賢人がいる。
「なあ、いたよ。向こうのクラスにいるぞ」
そう言った賢人が指を指す。
「西富中の新藤考樹」
そこへ目を向けると、見覚えのある顔がある。思わず息を呑んだ。確認の為にもう一回見てから、驚いた顔を賢人に見せた。
「な、そうだろ。噂は本当だったんだな」
賢人は嬉しそうだった。僕の胸もどんどん高鳴っていった。
本当だった。新藤は同じ高校に進学していた。
ホッと胸の力が抜けた。ずっとこれが気懸かりだった。彼と同じ高校に入れた。それだけで嬉しかった。
あの日の新藤の美しい走りが蘇ってくる。
力強くて、華麗で、しなやかに坂道を駆け抜けていったあの背中。
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