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放課後、駿太は、昴流、赤石、朴山たちと朴山神社に向かった
朴山神社は小高い山の上に建ち、そこまでは急な階段か緩やかな坂道のどちらかで行く
健康な中2となれば当然選ぶのは階段だ
運動部の昴流と赤石は1段飛ばしで駆け上がっていく
駿太は景色を眺めながらゆっくり階段を登っていった
朴山も同じペースで登っていた
「お祭りは4月の中旬なんだね」
階段の途中の掲示板に、お祭りのポスターが張ってあった
「コノハナチルヒメの“コノハナ”は桜のことなんだって」
「だから桜が散る季節にお祭りをするってこと?」
朴山がうなずいた
「あとね、聞いた話だと、コノハナチルヒメの神社は珍しいんだって」
「そうなの?」
「お姉さんのサクヤビメはたくさんあるみたいなんだけど」
天孫と結婚して炎の中で三神を出産した神様の名前だ
「そういえば朴山さんの名前も“サクヤ”だね。そこからとったの?」
「そうだと思う。“チル”じゃあんまりだから」
「確かに」
駿太は朴山と顔を見合わせて笑った
そのはにかんだ笑顔を見て、朴山は“チル”の方が似合うなと駿太は思った
境内に上がると視界が開け、海が見渡せた
真っ先にフフの祠を探した
フフの祠がある高台はすぐに見つかった
駿太が手を振っていると、赤石が近づいてきた
「何してるの?」
「え、家の方向に手を振ってた」
「誰かいるの?」
「いないけど…」
赤石は不思議そうに首をかしげた
「鋏くん、こっち」
朴山が手招きした
境内の脇に社務所があって、朴山はそこに入っていった
「ここが家なの?」
「ううん。家は階段の下にあるんだけど、この時間は家には誰もいないから、学校が終わったら直接こっちに来てるの。チルヒメの掛け軸もこっちにあるんだよ」
賑やかな足音を聞き付けて、年配の白い袴姿の男性が入口右手の部屋から顔を出した
朴山は、男性を祖父だと紹介した
どうやらそこが事務所で、祖父は神主のようだ
「お帰り。お友達?」
「うん。第二小から来た子達。町のこと調べてるんだって。チルヒメの掛け軸見せてもいい?」
「神社に興味があるのかい?」
神主が駿太と昴流の顔を見た
昴流はうろたえ、駿太はうなずいた
「こっちにおいで」
神主は椅子から立ち上がり、別の部屋に駿太たちを招いた
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