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海が好き、やっぱり海が好き
(神様神様、ばーちゃん、死にました。これ、祓いの席のお寿司です。よかったらどうぞ)
葬儀の翌日からも、当然のように日々はめぐる
鋏駿太は、学校に行く前に、寿司詰めを携えて階段の上の祠に向かった
小さな祠の前には、前日に駿太がお供えしたおにぎりと卵焼きがほぼそのままの形で残っていた
アリの行列の先頭の部分だけ残し、残りは持参したビニール袋に入れて持って帰る
駿太は仕事を終えると、祠から見える海を眺めた
海は好きだ
小学生の頃に、父親の単身赴任先のスペインに遊びに行ったことがある
父親は久々に会う駿太と母親のために、休暇を取って、レンタカーでスペイン全土を回ってくれた
父の赴任先はマドリード
独特の暗さと、陰鬱さと、閉塞感のある街
駿太は、空港から父親のアパートに向かう車の中でさえ恐怖を感じていた
翌々日、母親のたっての希望でバルセロナにある有名な建築を見に行った
バルセロナは、マドリードと全く違った
独特の明るさと、華やかさと、解放感のある街
同じ犯罪者が闊歩する大都市でも、マドリードよりバルセロナの方が怖くない
あくまで主観だが駿太はそう感じた
そして、それは海のおかげだと思った
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