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しんゆう
「誰?!どこにいるの?!」
「だーかーらー」
その時、スマホがブルブルと振動した
駿太はおにぎりと卵焼きを入れたごみ袋をつかむと、滑るように一本道を駆け降りた
残された犬は、鼻で寿司詰めの蓋を開けると、ハグハグと食べた
※※※※※※※※※※※※※
学校帰りに100均に寄って、小さなお子さまランチのプレートを2枚買った
祠にお供えするときに、お皿がないと片付けが大変だと思ったからだ
洗い替え用に2枚
湯飲みもほしい
駿太が棚を回ろうとすると、一緒に買い物に来ていた友だちの越野昴流がカゴを覗き込んだ
「お前、そんなん買ってどうするの?」
手にはペットボトルとお菓子を持っている
「それ、入れていいよ」
駿太が言うと、昴流は首を横に振って、
「遊びに行かせてもらう御礼だから」
と言った
同じ町内と言っても広く、小学校は分校があった
しかし、中学校はひとつしかない
駿太と昴流は分校出身者で、どちらも家が遠く、自転車通学を許可されていた
「知ってた?俺んちとお前んちって、山の方回ると近いって」
「そうなん?!」
100均のある町の中心部から、駿太の家にいくまではほぼ上り坂で、後半はずっと立ち漕ぎしなくてはならない
「じゃあ今日はそっちから帰るの?」
「どうすっかなー」
中2の男子にとって、立ち漕ぎなんて朝飯前である
お陰で二人とも足は速かった
「そういやさ、朝、お供え行ったら犬がいたんだよな」
「野良?」
「それが、結構きれいな毛並みだったから飼い犬じゃないかなあ。この辺の犬ではないなら、昴流んちの方から来たってこともあり得るよな」
「犬飼ってるうちは多いけど、いなくなったなんて話しは聞いてないなあ」
自宅の前に自転車を止めて、家の中に入った
「あ」
昴流は、床の間の祭壇の前で立ち止まった
「四十九日はまでそうしておくんだってさ」
駿太は、買ってきたコーラをコップに注いで祭壇に置いて、手を合わせた
昴流もそれに倣う
「…仏壇にコーラかよ」
「ばあちゃん、コーラ好きだったんだよね」
「マジ?」
そんな会話をしながら、2階の駿太の部屋に向かった
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