使い神

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駿太は、昼休みに早速、学校の図書館に行って古事記に関する本を借りた 昼休みいっぱい使って調べたが、フフが言っていた木花知流比売(コノハナチルヒメ)の記述は一ヵ所しか見つからなかった 母は【コノハナチルヤヒメ】と言っていたが、実際は【コノハナチルヒメ】というらしい 同じ大山祇神(オオヤマヅミノカミ)の子供でも、天孫・瓊々杵尊(ニニギノミコト)に嫁ぎ、海幸彦、山幸彦の名で知られる火照命(ホデリノミコト)や、火遠理命(ホオリノミコト)を産んだ木花之佐久夜毘売(コノハナサクヤビメ)や、その姉である石長比売(イワナガヒメ)の逸話はあるが、コノハナチルヒメは名前だけしか出てこなかった 駿太は古事記に関する本を図書室で借りられる最大数借りた 昴流が遊ぼうと言ってくれたが、駿太は断って帰ってきた 自転車立ち漕ぎで全速力で帰ってきたため、祠までの階段で足がガクガクと震えた 「フフいる?」 駿太が声をかけると、祠の後ろからフフが現れた 「(わらべ)か」 「僕の名前は駿太だよ。鋏駿太」 駿太は、フフの隣に山座りをした 「コノハナチルヒメについて調べてきたんだ」 「おお」 フフは嬉しそうに駿太の膝にくっつき、本を覗き込んだ 「・・・こっちの方には名前も出てなかったね」 本を読み終える頃には、夕日が半分ほどしか残っていなかった 「何もわからぬではないか!もっと有益な情報はないのか!」 フフが怒ると、ばうわうと吠えているように聞こえる 「フフは何も覚えてないの?」 「この地に生まれ(いで)てより、媛の名と己の役割しか覚えておらぬ」 「役割って?」 「ここで媛を守る役割を仰せつかっておる」 「ヒメを守らなきゃならないの?ヒメは危険なの?」 「わからぬ」 「どういう風に危険かわからないとねえ…」 駿太は頭をひねった その時、夕日をバックに、高台に建つ鳥居のシルエットが目に入った 「あそこの神社は何を祀っているんだっけ?」 「どこだ?」 「ほら、鳥居が見えるでしょ?」 夕日が沈んで、辺りが急に暗くなった 「見えん」 「あるんだよ。明日調べてきてあげる」 「悪いな」 「フフはここから動けないんでしょ?」 「動けることは動けるが、何か落ち着かなくてのう」 フフが寂しげに笑った
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