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いつもこうだ。
何だかよくわからないことに巻き込まれて、気づけば徒労に終わる。
成功さえすれば人生が全てうまくいくのに・・・。
成功しないから人生が全てうまくいかない・・・。
あの先輩はきっと成功したから・・・。
柄本さんは返事を待つような表情で俺をじっと見つめていた。
はぁ・・・。
午前中いっぱいは柄本さんに付き合うしかないか。
でも、昼になったら俺はどんなことがあっても駅に向かう。
今日は元々休みだし、午後から仕事したって問題は無いだろう。
俺はカバンを持ち直すと、ハンカチで顔を拭った。
「柄本さん。午前中いっぱいは柄本さんに付き合います。でも午前中までです」
俺は柄本さんに最大の譲歩をした。
本音を言えば、俺は誰がこのアパートで犬を飼っていようが知ったこっちゃない。
貼り紙を見た飼い主がこのアパートで犬を飼うのをやめればいいだけだ。
今のところ俺が迷惑を被っているわけでもない。
ルール違反は少しは気になる。
でも、そんなことは基本的にはどうでもいい。
誰がルール違反をしようが俺には関係がない。
柄本さんは再び郵便受けに向かうと、人差し指を動かしながら何かを確認し始めた。
「何してるんですか?」俺は柄本さんの肩越しに郵便受けを見た。
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