一〇一

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柄本さんは郵便受けを確認し終えたのか、溜め息を一つついた。 柄本さんは一体何を確認していたんだ? 「ペット用品のチラシでもあるかと思ったが、ダメだね」 あぁ、ペット用品のチラシを確認していたのか。 考えてることは分からないが、何を確認していたのかは分かった。 俺はふと思った。 そもそも一体誰がこのアパートで犬を飼っているのか、家主に真相を聞けばいいのでは? 俺はそう思い、思わず口にした。 「柄本さん、そもそも家主さんに誰がこのアパートで犬を飼っているのか聞いたらどうですか?」 柄本さんは思い切り頭を振った。 「ダメだ、それだと意味がない」 意味がない? って何? むしろ、家主に聞かないでいる方が意味がないのでは? 俺は言葉にならなかった。 柄本さんに抵抗する気力が段々と失せてきた。 事態が終わってくれれば意味なんてどうでもいい。 そう考えていると不意に後頭部に視線を感じた。 俺は視線が気になって後ろを振り返った。 しかし、後ろには誰もいなかった。
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