一〇一

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「ちょっとお話し出来ませんか?」 そこまで言うと、俺は飼い主探しに真剣になっている自分に腹が立った。 「阿閉さん」 柄本さんがいつの間にか隣に立っていた。 「あとじさん?」俺は柄本さんの言葉を繰り返した。 「名前。郵便受けに書いてあった」 あぁ、柄本さんはしっかり名前を見てたのか。 こう言ってはなんだが、柄本さんは意外と要領がいい。 彼の名前は分かった。 あとは、阿閉さんが犬を飼ってないかを確認するだけだった。 「阿閉さん。阿閉さんは本当に犬を飼ってないんですか?」 俺は小窓に向かって声を張った。 ガチャリ。 ドアが少し開いた。 ドアの隙間からジャージ姿の長身の男がこちらを覗いた。 「あ、すみません。大声出して」 「ぼ、僕は犬は飼ってません」 ドアにはドアチェーンが掛かっていた。
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