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「ちょっとお話し出来ませんか?」
そこまで言うと、俺は飼い主探しに真剣になっている自分に腹が立った。
「阿閉さん」
柄本さんがいつの間にか隣に立っていた。
「あとじさん?」俺は柄本さんの言葉を繰り返した。
「名前。郵便受けに書いてあった」
あぁ、柄本さんはしっかり名前を見てたのか。
こう言ってはなんだが、柄本さんは意外と要領がいい。
彼の名前は分かった。
あとは、阿閉さんが犬を飼ってないかを確認するだけだった。
「阿閉さん。阿閉さんは本当に犬を飼ってないんですか?」
俺は小窓に向かって声を張った。
ガチャリ。
ドアが少し開いた。
ドアの隙間からジャージ姿の長身の男がこちらを覗いた。
「あ、すみません。大声出して」
「ぼ、僕は犬は飼ってません」
ドアにはドアチェーンが掛かっていた。
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