16人が本棚に入れています
本棚に追加
「阿閉さんが権力を持ってないのは分かりました。じゃぁ、阿閉さんが犬を飼ってないって証明できますか?」
柄本さんが隣で二ヒヒと笑った。
阿閉さん越しに見える家の様子は思ったよりも明るかった。
犬の鳴き声はしない。
犬の走り回る音もしない。
やっぱり阿閉さんも犬を飼っていないのだろうか。
「も、も、もし、僕が犬を飼ってたらどうなるんですか?」
阿閉さんはジロっとこちらを見た。
もし、阿閉さんが犬を飼ってたらどうなるのか?
もっともな質問だった。
どうなるんだろう。
俺はもう柄本さんに付き合っているだけではない。
自ら進んで事態に関わった。
だけど、俺たちは警察ではない。
阿閉さんではないが、俺たちは阿閉さんをどうこうする権力なんて持ってない。
ただ、阿閉さんが白か黒かをはっきりさせたいだけだ。
阿閉さんが白か黒かはっきりすれば、俺は柄本さんから解放される。
そして、俺は駅に向かうことが出来て、成功へと一歩近づく。
逆に言えば、阿閉さんが白か黒かがはっきりしなければ、俺は駅に向かうことが出来ずに、成功から一歩遠ざかる。
最初のコメントを投稿しよう!