一〇一

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「阿閉さんが権力を持ってないのは分かりました。じゃぁ、阿閉さんが犬を飼ってないって証明できますか?」 柄本さんが隣で二ヒヒと笑った。 阿閉さん越しに見える家の様子は思ったよりも明るかった。 犬の鳴き声はしない。 犬の走り回る音もしない。 やっぱり阿閉さんも犬を飼っていないのだろうか。 「も、も、もし、僕が犬を飼ってたらどうなるんですか?」 阿閉さんはジロっとこちらを見た。 もし、阿閉さんが犬を飼ってたらどうなるのか? もっともな質問だった。 どうなるんだろう。 俺はもう柄本さんに付き合っているだけではない。 自ら進んで事態に関わった。 だけど、俺たちは警察ではない。 阿閉さんではないが、俺たちは阿閉さんをどうこうする権力なんて持ってない。 ただ、阿閉さんが白か黒かをはっきりさせたいだけだ。 阿閉さんが白か黒かはっきりすれば、俺は柄本さんから解放される。 そして、俺は駅に向かうことが出来て、成功へと一歩近づく。 逆に言えば、阿閉さんが白か黒かがはっきりしなければ、俺は駅に向かうことが出来ずに、成功から一歩遠ざかる。
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