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「いや、ただ誰がこのアパートで犬を飼っているのかはっきりさせたいだけです」
俺は俯いている阿閉さんに言った。
阿閉さんは黙ったまま、小さく咳をした。
もしかして阿閉さんは本当は犬、飼ってるのかな?
小さな疑問が急に頭の中に湧いた。
それに、阿閉さんはどうしてドアチェーンをしたままなのだろう?
犬を飼っていないと証明したければ、ドアチェーンは外した方がいい。
要らぬ誤解を招くだけだ。
阿閉さんがドアチェーンをしたままの理由がよく分からない。
いや、ただ単に俺たちが不審だからと言われればそれまでだ。
ただ、俺にはドアチェーンが他人を締め出す心の鍵のように見えた。
「ドアチェーン、外していただくことは出来ませんか?」
俺は阿閉さんにダメ元で聞いてみた。
柄本さんはニヤニヤしたままだった。
「も、もし、このドアチェーンを外したら、お二人を死ぬまで呪います」
阿閉さんは今までにない強い言葉で言った。
俺は阿閉さんの言葉に呆気に取られた。
阿閉さんは言い終わるとまた俯いた。
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