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俺はすぐに名前を確認した。
郵便受けには「一〇一 柄本 昇」と書かれていた。
あぁ、一〇一号室の住人か。
俺は少し安心した。
老人が郵便受けを閉めると、貼り紙を指差した。
「誰だろうね。これ?」老人は口だけ笑うような表情でこちらを見た。
気持ち悪っ。
俺はこれ以上無駄な時間を使いたくないので、全てを忘れてこの場を立ち去ろうとした。
しかし、老人が俺の前に立ちはだかった。
老人は貼り紙に手を伸ばすと、丁寧に画鋲を外し始めた。
「いや、待ってください。それはまずいでしょう」俺は老人を慌てて止めた。
「え?どうして?」
「どうしてって、家主が貼った貼り紙でしょう。勝手に外したらまずいでしょう?」俺は老人から画鋲を奪うと、元の位置に刺し直した。
なんなんだこの人。
常識がないのか?
俺も結構非常識だと言われる方だけど、この人ほどではない。
この人と比べたら俺はむしろ常識的だ。
「俺は用事があるので、じゃぁこれで」
老人に挨拶をして、背後に回ろうとした。
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