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気色悪っ。
この老人はなんでさっきからニヤニヤしてるんだ。
もう決めた。
駅に向かおう。
俺は再び駅に向かうことを心に決めた。
いや、待てよ。
俺がこの場を去るとこの老人はどうするのだろうか?
また、貼り紙を外したりしないだろうか?
そんなことは本来どうでもいいのだが、なぜだか無性に気になった。
それに、なんだか家の鍵を掛けたかどうか不安になってきた。
万が一、家の鍵を掛け忘れていたらこの老人はきっと・・・。
俺は動くに動けなかった。
まったく、やっかいな朝だ。
俺はたった一枚の貼り紙のせいで、こんなに胸を苦しめられるのかと腹が立った。
家の鍵が掛かっているか確認しに行くか、それともこのまま駅に向かうか、それとも第三の道を探し出すか。
しかし、俺には第三の道なんてなかった。
老人が俺をぴったりマークしていたからだ。
「いいの?わたしんち」老人はむしろ自分の家を見て欲しそうにこちらを見ていた。
いや、それいいから。
さっきも言ったでしょ。
俺は内心毒づいた。
「すいません。俺、急いでるんで」
俺がそう言うと、老人は少し寂しそうな顔をした。
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