一〇一

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気色悪っ。 この老人はなんでさっきからニヤニヤしてるんだ。 もう決めた。 駅に向かおう。 俺は再び駅に向かうことを心に決めた。 いや、待てよ。 俺がこの場を去るとこの老人はどうするのだろうか? また、貼り紙を外したりしないだろうか? そんなことは本来どうでもいいのだが、なぜだか無性に気になった。 それに、なんだか家の鍵を掛けたかどうか不安になってきた。 万が一、家の鍵を掛け忘れていたらこの老人はきっと・・・。 俺は動くに動けなかった。 まったく、やっかいな朝だ。 俺はたった一枚の貼り紙のせいで、こんなに胸を苦しめられるのかと腹が立った。 家の鍵が掛かっているか確認しに行くか、それともこのまま駅に向かうか、それとも第三の道を探し出すか。 しかし、俺には第三の道なんてなかった。 老人が俺をぴったりマークしていたからだ。 「いいの?わたしんち」老人はむしろ自分の家を見て欲しそうにこちらを見ていた。 いや、それいいから。 さっきも言ったでしょ。 俺は内心毒づいた。 「すいません。俺、急いでるんで」 俺がそう言うと、老人は少し寂しそうな顔をした。
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