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あれからニ十年が経った。
結局わたしはあの後もいくつかの大会に出てはみたものの、タイトルを取ることができなかった。でも不思議と後悔はなかった。それは、世界なんて目指さなくても、一番憧れていた選手からステキな言葉をもらえたからかもしれない。
テレビを点け、たまたまフィギュアスケートの世界選手権が中継されているのを見て少しだけ昔のことを思い出していると、
「おかあさ~ん、お腹空いた」
今年小学校に上がった娘の雪穂が、不機嫌そうにリビングに入ってきた。
「もうすぐ夕飯できるから、雪穂もお手伝いして。お父さんもすぐ帰って来ると思うし」
「はーい」
快く返事をしたように聞こえたけれど、雪穂はなかなかキッチンに入ってこない。
「雪穂?」
「ねぇ、おかあさん」
テレビの前で佇む雪穂が呼びかけてくる。
「なに?」
「これ、すごくきれいだね」
親子ってこんなに似るもんなんだ……。
そんなことを考えて顔をほころばせながら「そうだね」と応じる。
「……わたしにもできるかな」
花が咲く予感がした。
今はまだ蕾だけれど、いつかきっと世界を魅了する、この世でたった一輪の花が咲く予感が。
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